鳥獣奇譚  ぬばたまの 10(最終話)



「お婆ちゃん、それでそれで?それからどうなったの?」

「二人が去った後、家に残った女はな、どこからきたのか黒い炎に包まれて消えてしまったんだと。

近所の人達が、火事だっていうんで大慌てで帰ってきた父親が見た時は、家はもうもうと黒い煙をあげていてな、燃え盛っているところ。

ようやく火が落ち着いて焼跡に入ってみると、家にいたはずの母親と娘の姿はどこにもない。

その代わりにな、大きな大きな蜘蛛が、焼け焦げて死んでおったそうなーーーー」


キャー、こわーい!と声を揃える少女たち。

そこへ少女たちの母親が声をかけた。

「ちょっと、またその話してるの?夜眠れなくなるからあんまり怖がらせないでね、お母さん。私も小さい頃お婆ちゃんから聞いたわぁ、その話。

妙に怖かったのを覚えてる。

そうそう、明日にはもう帰るから、お土産買いに行ってくるわ。あなた達も行く?そう、じゃ、準備して。」

そういって、バタバタと廊下を歩いていく。

「お婆ちゃん、昔のお話、まだ続きある?今度来るのは夏休みだから、続くなら、今の内に聴きたい!」

「じゃあ、お買い物にいった後に話してやろうかね。ほら、行っといで。」

はぁいと返事をして、少女たちも廊下をかけていった。

急に静かになった部屋。

カチカチと、誰かの歯がなった。




終わり


夜半の月

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